「成長マインドセット」を取り入れることで、組織・個人はどう変わるのか。今回は、中古住宅の仲介、リノベーション、インテリアの提案などを軸に、それぞれの人に合ったライフスタイルの提案を行う株式会社オノヤの代表取締役、小野浩喜さんにお話を伺います。
小野 浩喜
昭和39年6月、福島県須賀川市出身。慶応大学商学部卒業後、平成6年に株式会社オノヤに入社。平成10年よりリフォーム事業を立ち上げ、平成23年に代表取締役に就任。福島県を中心に「デザインリフォームの裾野を広げて住宅を楽しくする」「中古住宅の流通を円滑化して、住宅コストを抑え、生活をゆとりあるものにする」というビジョンを掲げ、ライフスタイル提案企業として日本一の会社を目指している。
社内で共通言語をつくるために
ー「成長マインドセット」を社内で取り入れた背景を教えてください
新卒・中途にかかわらず退職者が増えたのがきっかけです。会社の規模が大きくなり、従業員が100名を超えるようになったことで、どの企業も経験するいわゆる「100人の壁」にぶち当たったのです。
退職の理由はさまざまでしたが一番多かったのが、「会社の未来が見えない」というものです。日々伝え続けていたつもりでしたが、十分に社員に届いておらず非常に悔しかったです。その要因として大きかったのはマネージャーの育成不足。会社の決定や私の指示を、管理職の面々に当事者意識を持って動いてもらうことができていませんでした。そうなれば当然、その部下に対しても会社の考えや私の思いが伝わることはありません。
また、会社として社員教育に力を入れていたにも関わらず、「成長とはなにか」「なぜ必要か」「どうすればできるのか」といった問いに対する共通の認識がなく、そもそも自分が成長する必要性すら感じていない社員も多かったことも大きな課題でした。そんな状況では、いくら社員のことを考えてアドバイスをしても、受け入れてもらう以前に、理解してもらうことすらできません。
ー課題解決のためにどんなことが必要だと考えられたのでしょう
まず、私自身がもっと成長しなければならないと思いました。私にもっと経営者視点や自身の想いについて伝える力があれば、マネージャーにも当事者意識を持ってもらうことができ、成長させることができると考えたからです。
また、私も含め、社員同士が同じ視点で話し合えるように「成長」に関する共通言語を持つ必要があると考えました。
そのために「成長マインドセット」研修を受けることにしました。最初は組織運営や自身の成長に関して、著者で同じ福島の先輩である吉田さんに相談するところから始めましたが、その後マネージャー陣へ、最終的には、全社員に対して研修をしてもらいました。
ー研修後、どんな変化がありましたか?
徐々にではありますが、退職者が減っていきました。当初は「忙しいのに」「一体何のために必要なのか」「吉田さんなんて知らないぞ」と研修への参加に前向きでない社員もいました。それでも研修後は「成長」に関する共通認識を社内に浸透させることができました。
退職を希望している社員に対しても「ブレーキ」や「三叉路理論」といった共通の言葉を使って議論をすることで、私の話を冷静に受け入れてもらえるようになりました。その結果「このままだと、たとえ転職したとしても、また同じ問題が起きる、だからもう一度頑張ってみよう」と、気持ちを前向きに切り替えてくれる社員がだんだんと増えていったのです。
ーご自身の成長に関して、実感するところはありますか?
大いに実感しています。まず、自分の未熟さについて気づくことができました。私はこれまで、どうしても自分がやってきたこと、成し遂げてきたことに対するプライドから、他の社員からの意見を受けいれられずにいました。ただ研修を受け、そんな自分の考えは成長を阻害するブレーキである「大きな子供」だと認識できるようになりました。それからは自身の振る舞いについて気をつけるようになり、社員の発言について素直に耳を傾けることができるようになっていきました。すると自然と私や会社に対する意見が増え、社員からの新しい意見をどんどん吸収できるようになりました。
ー今後、このマインドセットをどう社内で活用していきますか?
今後も社内で共通の言語、考え方として継承していきたいと思っています。
そのために、たとえば、自社独自の行動指針となる「フィロソフィー」に、研修を受けた内容を加えて、各店舗で勉強会を開催し、マネージャー陣には週に一度、自分の解釈について発表してもらうようにしています。
また、新入社員には実際に自分の「アイスバーグ」について書いてもらい、成長に必要な考え方を学んでもらいつつ、自己認知をしてもらうようにしています。
今後も「成長マインドセット」の内容を共通の言語、文化として会社のなかに根付かせていきたいです。