【イベントレポート】リーダーズ戦略思考塾 第3回「人材採用戦略」

事業を急成長させるために重要である「戦略思考」を他社のリーダーと切磋琢磨して学ぶ。そんなコンセプトのもと、成長マインドセット著者吉田 行宏氏が主宰する招待制の公開イベント「リーダーズ戦略思考塾」。第三回のテーマは「人材採用戦略」です。どの会社にとっても最重要課題である採用について、白熱した議論が行われました。詳細をイベントをレポート形式でお届けします。

開催概要
日時:10月27日10時ー13時
場所:31VENTURES Clipニホンバシ
テーマ:人材採用戦略
参加者:40名
運営:リーダーズ戦略思考塾企画・運営チーム

「自分は人事担当でないから関係ない」ではない

会の冒頭、各社ごとに自社の採用について分析したシートを記入しました。

各社を比較したグラフを見ながら、なぜ差が生まれるのか、どうやって戦略的に採用競争に勝っていくべきかについて、今回は「ターゲティングと母集団形成」「スクリーニング、クロージング」という分野に分けて話を進めていくというアナウンスがありました。

続いて、吉田さんより人材採用戦略について簡単なレクチャがありました。

「会社の成長に必要な4つの要素として、『目標・ビジョン』『事業戦略』『組織戦略』『市場選定』があります。その中で、人材採用はどの会社にとっても非常に重要な要素。しかし、この場はスキルを学ぶ場ではなく、戦略を学ぶ場。自分は人事担当だから関係ないと考えずに、経営者目線で取り組んでください。」

実際にワークとして各社、自社の組織をマトリクスで分析し、現在の組織状況とどの層を採るかの整理を行いました。こちらのフレームワークは今後NOBIBA上でも公開していきます。

PP人材を獲得するための「ミートアップ」

ここからは、ターゲット人材ごとに戦略を考えるワークショップを行いました。まずは、「PP人材」。Player Potentialの略で、真面目で素直、一生懸命、地頭よしという特徴があり、学生の頃からコミットの高いインターン生や、ベンチャー志望の新卒、大手企業に入って違和感を感じた第二新卒などがペルソナとなります。

このターゲット層に有効だと提唱されたのが、「マスぷる戦略」。良質な層が集まってくる仕組みを作ることで、一人一人に多くの工数をかけずに採用する体制を作ることを目指します。

実際に、マスプル戦略の事例として、SNSを通じた会社の発信や、週次の達成事項などを部署ごとに報告する会に候補者を呼ぶ施策などが挙げられました。

様々な施策がある中で、便宜上、以下のような整理を行い、今回はミートアップに注目して施策を検討します。

ここからは各社ごとに「採用候補者を獲得するためのミートアップ設計」というテーマでワークが行われました。

吉田さんからワークに対しての補足として、以下のようなコメントがありました。

「うちの会社はこの施策違うよね、と短絡的に判断してしまうのは浅いです。うちは本業のXXが忙しいからミートアップには時間が割けないという方もいらっしゃるかもしれませんが、それは言い訳です。色々できることが望ましいので、全てやる覚悟でまず考えてみることが重要です。」

実際の発表では、休学中の学生をターゲットにした「休学ナイト」や、未経験から新人エンジニアを教育する最速教育メソッド、60分間で旅行ツアーを企画するミートアップまで、様々な企画が出ました。

続いて、ワークについての質問コーナーが設けられました。

質問1
各社色々な企画をしたと思うが、このミートアップでどの課題を解決するかが重要だと思うが、そこは意識しないほうがいいのか。

吉田さん回答
これはあらゆるものに当てはまる質問。Point of No Returnのものについては慎重になったほうがいい。例えば橋を作るのにプランなしで臨むのは後戻りができないので、コンセプトから入ったほうがいい。一方で、体験学ベースで学んでいけるものもある。15分考えても3時間考えても成果は大きく変わらない。今回はまずやってみるのでもいい部類。大企業のように何をするのにも準備に時間をかけてからではないとできなくなるのはよくない。

質問2
今の話について、ベンチャーではなんでもやってみても一定リソースを割かれたり、成果が出ずにこれはなんでやっているんだっけということの方が多いと思う。であれば、どんなミートアップをやるかを考えるのはあまり意味がなく、なぜそれが必要か、どんな課題のためにやるのかなど、上位について、どこが論点かをシェアすることが価値なのではないか。

時間を決めてやるのがよいと思います。それにどれだけ時間をかけるか曖昧なパターンもある。あとは、多めにやって絞っていくのと、少数コンセプトを練って進めていくのはリーダーのスタイル。例えばFiNCは色々なことをたくさん並行している。最初は投資家から色々やりすぎでないかと言われていたが、今は言われなくなった。様々な成果やシナジーが起きているため。全ての経営者にお勧めではないが、溝口さんはそれができた、という例。

質問で深掘りを行ない、1つ目のパートは終了です。

この人材、御社では採用しますか?

続いてのパートでは、応募者がきたあとのスクリーニングをテーマにします。「辞めたい部下」で慰留できる人、できない人の見極め方」(https://diamond.jp/articles/-/177055)という吉田さんの記事を参考に、仮想の応募者を面接し、通過させるか落とすかを判断するワークショップを行います。

会場では、「NO」のチームが多数で、「正しく強い動機ではない」「事業がピボットしたら離れてしまうのでは」などという意見がありました。一方で、現職での成果もあるので、まだ2次面接で聞いてみる余地はあるのではないかという意見から「YES」とするチームもありました。

吉田さんからは、

「採用判断は難しく、百発百中はない。とくに人物の良し悪しに加え、それがわかりやすいわかりにくいという軸もある。面接ではおとなしいが強い芯を持っている人もいる。また、会社として選考基準を厳しくすることに寄ってしまい、その基準だと誰も採れないということも起こりうる。選別だけでなく、入ったあと変える力を持つことも重要。」

というフィードバックがありました。

自分よりアイスバーグの大きい人材を一本釣りするために

続いてのテーマは、「MX人材」の採用戦略。Management CXOの略で、大手で現役バリバリのチャレンジ人材 ・大手で一仕事終えた人 ・急成長ベンチャーで活躍、新天地で再チャレンジ ・起業してうまくいかない or バイアウト、などがペルソナとなります。

彼らは採用市場に出回っていないので、PP人材と異なるアプローチとして「ニッチぷっしゅ戦略」が提唱されました。

実際に、事例として、社内で一緒に働きたい人をまとめたKIT(Keep In Touch)リスト活用や、社会人インターン受け入れ、顧問や株主などハイエンドからのリファラル戦略などが紹介されました。

一方で、市場でスーパー人材に出会ったとしても、どうすればよいかわからないということも起こり得ます。実際に、自分よりアイスバーグが大きい人を採用することは難しいです。

そのため、そういった人材と接触したらなるべく早く、自社の代表など、より上位層に紹介をしようということが勧められました。

実際に、この戦略で1次後いきなり代表面接で優秀人材が複数決まった事例が共有されました。

そこで、ワークショップです。イベントでMX人材と遭遇し、なんとか採用のために代表を紹介したいという状況で、みなさんならなんと紹介するでしょうか。個人ワーク、各社シェアという順で取り組みました。


各社の発表後、ロールプレイを担当したLIFE PEPPER岡野さんからは、相手にとって何がポイントになるのかを考えることが重要。その人が将来どの方向に進みたいのかを考えて伝えているチームは刺さりやすい、というフィードバックがありました。

吉田さんからは、

・マシンガントークは双方向のコミュニケーションにならない
・相手目線にたつと、イベント登壇で不安を感じているので、具体的に褒めることが重要
・いきなり採用の話をするのもありだが、自社の勉強会に登壇してください、などというのも一つの手
・全てをその場で完結する必要はなく、あとのことまで考えて戦略的に行うことが重要
・あとは、そもそも意識的にそういったアンテナを持つことが重要

というお話がありました。

まとめ


最後に、全体を通じてのQ&Aと、運営チームから気づきや学びのシェアがありました。

質問1
紹介トークについて、言う人の立場のクラスが低い場合、どう溝を埋めるか?

吉田さん
これを言えばよいという魔法の言葉はない。情熱・思いとアイスバーグを大きくすることが重要。やったら経験値は上がるので挑戦することが大事。

質問2
採用で、うちでも叶えられるし、他社でも叶えられるということもある。うちじゃなくてもできるよね、というのは言うべきかどうか。

吉田さん
自社に合う合わないは判断したほうがいい。合う場合は、うちより活躍できる場所があると思わないこと、信じ込まないと迫力ある話ができない。だいたいの経営者は絶対それがあなたの幸せになるはずだという思いがあるはず。

質問2
試用期間など、入社するかしないかの間について、何か有効な施策はあるか?

吉田さん
条件次第なので相対的、肩書きなども、ある程度の人だと肩書きなしだと入らないこともある。

続いて、参加者からの感想シェアがありました。


wantedlyなどの勝ちパターンなどは非常にできていたが、採用の概念化などはできていなかったのでよかった。アウトプットが出るまでの機会を30分や1時間にしていたが、アウトプットが出ることが大きな気づきだった。

MX採用の重要性を認識できたのがよかった。その人たちが待っていても来ない、アンテナをたてる、名刺交換などのチャレンジは意識していきたい。

最後に、運営チームからの感想のシェアがありました。

会の設計者が気づきや成長が多いというのを再認識した。実際に会を進行する中でも気づきがあった。また、もっとこういう機会を自ら作らなければいけないと思った。会の準備で吉田さん、他社さんとフィードバックをうけて刺激になった

創業期以来、人事を担当していなかったし、ここ1ヶ月で新規事業なども始まり、正直後悔もあった。ただ、この1ヶ月でマインドセットが変わった。自分たちで小さな会社を作ったようなイメージ。色々なものを凝縮して学べたので、ぜひみなさんも積極的に参加してほしい。

印象に残っているのは岡野さんが話していた、会心の一撃を出すということ。吉田さんからは間違っていないけど、つまらないという話をたくさん言われた。日常生活の中でもそういった観点が非常に足りていなかったと気づいた。

戦略は自分が当事者にならないと作ることができないなと気づいた。今まではある程度決まった事業を運営していくことをしていた。ゼロからワークショップを考えるとそれを痛感した。みなさんも戦略思考を身につけるために、自分の人生でどうチャレンジするかを考えて欲しい。

学ぶと学び切ることの違いを感じた。例えば今日は、吉田さんがみなさんの質問にどう返すか、ホワイトボードに何を書くかなど、を見ていた。それくらいだと学ぶ。LIFEPEPPERで毎日日報を書くと、そこで言葉にして落とし込むと、学び切るに繋がる。学ぶと学び切ることは差が大きく異なる。みなさんはリーダーなので、ご自身が学び切ることはもちろん、学び切るチームを作ることが重要。今回は低空飛行から残り3日くらいで上がったが、グルーブ感を得られて素晴らしいチームだった。こういったチームを自社でも作っていってほしい。

次回テーマは11月17日、「他社事例から戦略をアドバイスする」です。

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