成長マインドセットは、企業や団体でどのように活用できるのか。さまざまな研修事例を通して、導入方法や参加者の気づき、成果などをお伝えします。今回は著者の吉田行宏から直接学び、「成長マインドセット」をより深く体験したい人に向けた公開セミナー「成長マインドセット吉田塾」の様子をお届けします。
【当日の流れ】
1 挨拶
2 自己紹介・本の学びの共有(班ごと)
3 著者・吉田への質問コーナー
4 ワーク 退職の相談に来た部下との1on1(2人一組)
5 成長マインドセット体験エピソード発表
6 総括
当事者意識を持つために必要なこと
まずは参加者で4人ごとの班を作り、アイスブレイク。自己紹介で打ち解けた後、「成長マインドセット」の感想や学びを班ごとに話し合い、会場全体でも共有しました。
次に、講師・吉田に対して質問するコーナー。班ごとに話し合った後、代表者数名から講師の吉田に向けて疑問をぶつけました。いくつかの質問と回答をご紹介します。
Q:
そもそも当事者意識を持てない人もいるのではないか。会社を経営していて、部活の長など個人の人格と組織の人格が近い立場に立ったことのある人しか、当事者意識を持てないのではないかと思う。もし、そのような経験をしていない人も当事者意識を持てるようになる方法があれば教えてほしい。
A:
まず2:6:2の割合で、本がなくても当事者意識を持って成長できる人、上手に場を作ってあげることでどんどん成長する人、本を読んでも全く学ぶことがないと思う人がいる。最後の2の層をのぞいて、ほとんどの人は手段さえ間違えなければ変わる。6の人の当事者意識を高めていくためには、当事者意識を持てる場で成功経験を作ってあげることが重要。そのような体験を経ると自律的に働くのが楽しくなっていく。
Q:
会社を経営していて、メンバーに成長マインドセットを読んで身に付けてもらいたいものの、どう浸透させたらいいかわからない。
A:
自分の都合で読ませようとしているのではないという説明が必要。社長が言うとポジショントークに聞こえてしまうため、それを感じさせない工夫をすること。さらに、一気に浸透させようとあせって強制するのはよくない。賛同する人を一人でも作って、社長ではない誰かがよかったということでうまく流れ作るなど、長いスパンで考えるといい。
参加者の方の中には経営者や経営幹部の方も多く、自身や会社の成長につなげることを意識した質問が多かったのが印象的でした。
成長マインドセットを体感
〇「知っていることとできることは違う」ワーク
内容の理解を深めた後はワークを通じて成長マインドセットを体験します。2人一組で片方が退職の相談に来た部下を演じ、もう片方がそれに応じる1on1面談を想定し、本に出てくる理論を使って、部下の相談に応えるロールプレイングをしました。
知っていることと出来ることは違います。参加者からの感想と吉田からのフィードバックを紹介します。
「部下の悩みの中にはロジカルに分析できないものもあるのではないか。」
吉田:
色んな相談受けてきたが、本質的な課題は悩みブレーキと他責に多いと感じる。悩みブレーキ踏んでいるしんどい状況では、環境が変わればどうにかなるのではないかと考えて辞めようとする。それをふまえて、相手へのアドバイスを自分で考えるといい。
「相談する側を経験してみて、頭ではわかるが反抗したい気持ちもあると感じた。」
吉田:いかに相手の気づきを与える聞き方ができるかが重要。相手がポジショントークだと感じると伝わらなくなる。肉親のような目線、相手が気づきを得る言い方で本質を伝えることが重要。
〇成長マインドセット体験エピソード発表
成長マインドセットの考えに基づいて自分の実体験を振り返りアウトプットすることで、より深く成長マインドセットの概念を理解します。まず班ごとにメンバーが自分の体験や気づきを共有し、その中から代表者が全体に向けて発表しました。
新卒2年目の参加者は他責にしないことの重要性に気付いたエピソードを発表。
「新卒1年目に配属された部署でそりの合わない上司がいた。その上司のせいで評価が得られていないと思い、他の部署に行けば評価されると考えていた。しかし、実際2年目に異動してみて自分に不備があったと気付いた。どんな場所でも他責にしたことは同じように失敗してしまうと実感した。」
吉田:
年齢に関係なく壁がある。そして、成長する過程で何度も壁にぶち当たる。その壁を乗り越えていくことで成長につながっていくと思う。
また、3社で勤務経験のある参加者はアイスバーグの下の部分の重要性を実感した体験を話しました。
「これまで3社で勤務してきて、仕事の成果への評価によってしか、自分を認められないと思っていた。しかし色んな経験を経る中で、成果の下にある振る舞いや哲学も評価されることに気付けた。」
吉田:
結果が全てということもある部分では正しいが、本当にその人が成長できるかは違うのではないかと思う。結果を求める意識とアイスバーグを育てる意識、どちらも大切。アイスバーグを大きくして、結果が出るまでにはタイムラグがある。そのタイムラグを待つ勇気を持ってアイスバーグを大きくすることにトライして、それでも結果がでなければ、その結果を受け入れるべき。
どんな壁も乗り越えられる自信になる
最後にイベント開催に協力してくださった株式会社FiNC 代表取締役社長 CEOの溝口勇児さんから総括がありました。
溝口さん:
「吉田さんには創業期からお世話になっています。創業して6年。吉田さんから教わった考え方が会社のカルチャーに根付きつつあり、これからさらに成長していける手ごたえを感じています。吉田さんとの出会いがなければ今のFiNCはないと思っています。
先日、サッカー選手の本田圭佑さんとお会いして、意気投合しました。というのも、本田選手のベースにある哲学が吉田さんの哲学と重なったんです。本田選手は自分のことを超ポジティブだと言っていました。それが単に楽観的というわけではなく、ベースとなる哲学があって、手に入れるものと諦めるものがいつも明確だからこそ、前を向いている。吉田さんの言葉で言えば『ブレーキを引かない』です。どんなことがあってもサイドブレーキをひかずに歩んで来れたことが今の自分につながっていると言っていました。
私も会社を経営する中で大変なこともありましたが、成長マインドセットをベースにしたからこそすべて乗り越えられてきました。そしてなにより、どんな壁が現れても乗り越えられるという自信を得ました。これから先、経営者である私自身や、FiNCを大きく成長させることで、哲学の体現が成長につながるということを証明します。そして皆さんとともにこの哲学を体現して、社会の発展に寄与する会社や個人を一緒に作っていけたらと思います。」
総括の後、今日の気づきのシェアがあり、「人間関係にも通ずるものがある」「自分のアイスバーグをどこまで大きくできるかが重要だと感じた」と言った感想が出ました。1人1人が、どのように成長マインドセットを生かすと個人や会社をより成長させられるか深く考えながら参加している姿が印象的なイベントでした。