OJT研修は正解がなく、多くのリーダーの悩みの種となります。即戦力になってほしいからと無理なOJT研修を行うと退職するケースもありますし、あまり構いすぎると自分で考える力が育ちません。
この記事では、OJTで新人の育成に成功したケースと、逆に失敗してしまったケースから、OJT成功のポイントをご紹介していきます。
悩むことだらけのOJT
そもそもOJTとは?
OJTとはすでにご存じの方も多いでしょうが、On-the-Job Trainingのことです。
つまり、座学の研修や勉強会ではなく、実際の職場で業務を行いながら仕事のやり方を学んでいく教育方法です。中世アメリカの造船所で生まれた「指定制度」が派生して生まれたといわれています。
多くの企業で取り入れているOJTですが、「うまくいかない」「新人がすぐ退職してしまう」「いつまでも独り立ちできない」と悩む指導係も多くいるのが現状です。
放置と育成は違う
OJTを経験した新人によっては、「OJTという名の放置」と感じることもしばしばあります。OJTとは実際に業務をしてもらうこともありますが、本質的な狙いとしてはあくまでも計画的な「訓練」です。
口頭で一通り説明した後、「できたら教えてください」と新人をつっぱねるような指導方法をした結果、「何度も質問に来る」「まったく予想外のミスを起こす」ということもありますし、さらには「新人が自信をなくして早期退職してしまう」という事象も起こりかねません。
OJTはヒューマンスキルに由来する部分も多い
OJTは新人の持つ「個性」を見極め、足りないところを補ってもらうよう計画的にトレーニングする必要があります。
つまり、報連相が足りていない新人には報連相を行う習慣を身につけてもらい、自信がなくて質問ばかりする新人には「自分で考える力」を身につけてもらうようトレーニングしていかなくてはいけません。
OJTの成功事例5選
成功事例① 新人と指導者の両方を育成する
マルハニチロ株式会社では、まず入社式翌日から2泊3日の合宿研修をおこないます。新入社員1人に対して部署ごとにOJTリーダーを1人配置し、3年間の若手教育を通して一貫したカリキュラムでフォローアップして育成していきます。
新人1人ずつにロードマップを作成し、OJTの途中で「なし崩し」のように独り立ちすることも防いでいます。
「OJTリーダー」を1人決めるものの、社員全体で新人を育てる社風づくりをしています。そのため、「1:1の指導による偏りをなくす」ようにメンバーを育成しています。
マルハニチロでも、かつては入社初期でつまずき早期退職者がでていたため、新人も安心できるOJTができるよう仕組みづくりをしています。
参照:三郎総合研究所「新入社員教育」より
https://www.e-sanro.net/jirei/freshman/e1708-107.html
成功事例② 会社全体で新人を育てる仕組みづくり
ニコン株式会社では「OJTサポート制度」としてOJTに力を入れていますが、その歴史は古く40年以上前から行っています。ニコンが目指しているものも、「OJTリーダーは1人いるものの、あくまでも会社全体で新人教育に取り組む」という姿勢です。
他のメンバーを巻き込むことで、新人が包括席に成長していける仕組みづくりを行っています。
また、OJTリーダーに向けた研修も行っており、指導係は所属長に対して「なぜ自分が選ばれたのか」「こんな時どうしたらいいのか」といった質問もできるようになっています。
OJTサポート制度を通して人間関係の面でもスキルアップして、指導係という立場を通して大きくスキルアップする社員もいます。新人のOJT研修以外にもメリットが生まれています。
参照:三郎総合研究所「新入社員教育」より
https://www.e-sanro.net/jirei/freshman/e1708-106.html
成功事例③「人づくり」と取らえ長いスパンで育成する
三菱電機ビルテクノサービス株式会社では、「人づくり」に注力しています。OJTなどの新人教育に成功した結果、設立当初は22人であった従業員も今では9000人以上の社員を抱えています。また、エンジニアは6000人以上と半数以上がエンジニアとなっています。
技術職の場合、およそ3か月の寮生活を終えた後3年間で基礎を学び、次の2年間でOJTなどの応用を学び、さらに1年でジョブローテーションを行うという6年ものスパンを経ることで多様性を身につけています。
寮生活では「ビッグブラザー」という年の近い先輩社員とも寝食をともにすることで、仕事だけではなくあらゆる相談に乗れるようにしています。
参照:三郎総合研究所「新入社員教育」より
https://www.e-sanro.net/jirei/freshman/e1708-105.html
2-4. 成功事例④ 冷静な指導で中堅社員へと育成する
ある会社では、細かく指示しなくてもそつなく業務を行う、入社したてのAさんがいました。途中で指導係が海外出張をはさんだこともあり放置状態になった結果、指示した書類の体裁がバラバラで意図した資料ができていません。
新人に意見を聞くと、「体裁を整える方法は習っていません」と言い切られ、指導係は戸惑いました。ですが、叱りつけず冷静に始動したところ新人もやり方を覚え、今ではしっかりと中堅社員としてOJTを行う立場にもなっています。
参照:ナビゲート「OJT体験談」より
https://www.navigate-inc.co.jp/ojt/case/success/003093.html
2-5. 成功事例⑤ あえて冷たくあたり新人を成長へ導く
ある会社の新人で、メモを取らずに何度も同じことを聞いてくる人がいました。指導係が「メモを取るように」と指導すればいいのですが、関係がぎくしゃくすることを恐れて指導できずにいました。
その結果「なれ合い」が生まれてしまい、指導係は困惑します。考えた結果、指導係は「前にも言いましたよね」とあえて冷たく言うようにしました。ただ、放置するのではなく、関係者への根回しなど影でのフォローは行っていました。
その結果、新人もメモを取ることを覚えて自分で考えて動くようになり、OJT成功となりました。
参照:ナビゲート「OJT体験談」より
https://www.navigate-inc.co.jp/ojt/case/success/002883.html
2-6.OJT成功事例から見るポイントとは
ご紹介した5つのOJT成功事例から見るポイントは、
・指導係にも「指導の仕方」を教育する
・指導員1人:新人1人という構図にせず、「社員みんなで育て上げる」という社風づくり
・頭から否定しない
という点が挙げられます。
新人それぞれにも個性がありますので、一概に正解を定義づけられないのがOJTの難しいところです。ですが、指導係1人に任せきりにしないという仕組みづくりは、OJTにおいて効果的といえるでしょう。
OJTの失敗事例2選
最後に、OJTによる失敗例も見てみましょう。
勝手に独り立ちしてしまうケース
指導係は新人のAさんを指導しており、最初のほうはAさんもイレギュラーなことは指導係に相談していました。
そのうちさらに新人のBさんが入社しましたが、そのころにはAさんが一通りの業務を行えるようになっていたため、しだいにAさんが指導をするようになりました。
その結果、Aさんはイレギュラーな案件でも相談せず独断で進めてしまうようになり、さらにミスの穴埋めをBさんに指示するようになってしまいます。
指導係が何度も注意しても直らず、「3年間は新人を指導するように」と言われていたもののおっくうになり、次第に放置状態になってしまいました。
参照:ナビゲート「OJT体験談」より
https://www.navigate-inc.co.jp/ojt/case/question/003386.html
「自分で考える」ことを強要してしまう
「自分で考えさせること」に重きを置く指導係は、新人が作った資料を見てことごとく業務の根本に関する質問攻めにして、何度もやり直しを命じます。新人は自分で考える力は身につくものの、納期が迫っているときは心理的負荷がかなり大きくなってしまいます。
もちろん新人が自分で考える力を身につけることは大切ですが、すでに頭を悩ませている案件に対して何度もやり直しを命じ、追い打ちをかけるような指導方法は精神的に追い詰めてしまいます。
新人の限界を見極められない状態でこのような育成をおこなうと、突然の退職につながるケースもあるので注意が必要です。
参照:ナビゲート「OJT体験談」より
https://www.navigate-inc.co.jp/ojt/case/word/003724.html
3-3.OJT失敗事例から見るポイントとは
OJTによる新人育成では、人間関係によるつまずきが起こりやすいです。指導係は新人の様子をよく観察し、タイミングを見て「助け舟」を出すことがポイントとなるでしょう。